2008年10月01日

自衛隊を直撃する民主党の財源案

 衆議院総選挙を前に、民主党が政策財源案を発表した。

民主党、「政策財源あいまい」の批判に対し総額20.5兆円の財源確保工程表取りまとめ
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00141515.html


 この財源案には重大な問題がある。「国家公務員の人件費を総額2割カット」というのがそれで、到底看過する事の出来ない政策である。何故ならこれは自衛隊の国防能力に直接関わってくる問題だからである。具体的に言うと、日本の国家公務員は現在約66万人であるが、そのうちの約27万人、つまり国家公務員の約40%が防衛省の人間なのである。

 防衛力の規模とその整備のあり方を決めるには、防衛省の専門家と政治家による十分な議論と検討が不可欠であるが、然るに民主党は、極めて大雑把な財源案の中で、ごく簡単に2割もの人件費カットを謳ってしまったわけだ。

 約66万人の国家公務員に対し、民主党が人件費削減の比重を実際にどう決めるかは、現時点では誰にも判らない。仮に防衛省からは全く削減しないとすると、それ以外の省庁から4割近くもカットする事になるが、それでは日本の行政は破綻するだろう。

 実際にはむしろ逆に、より大きなしわ寄せが防衛省・自衛隊へ向かう可能性の方が高そうである。国防に何ら興味のない人間にとってみれば、一番削減しやすいのが自衛隊の定数である。それどころか、民主党あるいは民主党と連立を組む可能性のある野党には、自衛隊を弱体化させようという明確な意図を持った人間が少なからずいる模様だ。民主党が示したあの大雑把な削減案が一体どれほど自衛隊に打撃を与えるかは、民主党が政権を取ってみないと判らないとしか言いようがない。何とも気の滅入る話である。
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2008年09月16日

神社解体・神道矮小化論の再来

 かつての国家神道は、神道という日本古来の豊かな信仰を時の政体・時の政府に従属させ矮小化させるものだった。国家神道下、役人の指図で廃止された神社は全国で7万社にも上り、これら神社の鎮守の森もまた無惨に伐採され消滅した。

 時の政府は「神道は(神社は)宗教ではない」と主張したが、全く無理な強弁と言う他無い。

 そして今また、その強弁が引っ張り出されようとしている。


総裁選 「靖国」でも舌戦 特殊法人化を/A級戦犯は分祀
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080915-00000924-san-pol


 14日に放送されたテレビ朝日の「サンデープロジェクト」で、次期自民党総裁候補の与謝野氏・石破氏はA級戦犯の分祀を主張し、最有力候補の麻生氏は靖国神社の特殊法人化を主張した。また麻生氏は、A級戦犯を分祀するか否かについて「国会で議論して決断すべきと」の見解も示した。


 現在の靖国神社は民間の一宗教法人であり、その靖国神社は、A級戦犯の分祀(A級戦犯の靖国からの排除)はしないと繰り返し断言している。これに反して政治家が分祀をしつこく要求する事などは言語道断である。

 そこで麻生氏は、靖国神社を非宗教法人化し、特殊法人「国立追悼施設靖国社」(仮称)として国家が管理し指図すべきだと主張しているのであるが、これは国家神道当時の政府が行った強弁と同様のものであり、全く無理な話である。なお麻生氏はこの種の発言を2006年にもしており、どうやら思いつきではなく本気で主張しているようである。麻生氏の思想や政策は首肯出来るものが多いのだが、靖国絡みの論となるとどれもまったく賛同出来ないのが残念である。

 現に神道の神社として存在する靖国神社を、靖国神社の意志に反する形で国家が解体し、「国立追悼施設靖国社」として作り直すなど狂気の沙汰としか言いようがない。麻生氏は、「現状では天皇陛下が参拝出来ないから」と理屈を付けているが、それなら国立追悼施設を別に作ればいいだけの話である。靖国神社を解体し非宗教化して「国立追悼施設靖国社」とするぐらいなら、そもそもそれが「靖国」である必要性も意義も何もない。


 ここで二つの論点がある。まず一つ目は、元々靖国神社は将来的に国家護持に戻る為として、戦後に神社本庁の傘下に入らなかったという点である。つまり本来、靖国神社は国家護持に反対ではなく、むしろそれを目標としていた。それで「ひとたび国家護持を目標とした以上、その結果非宗教化されるとしても仕方がないとして受け入れるべき」という主張が、現在の靖国神社の立場に批判的な人々の間でしばしば語られている。

 ここでその、1960年代の靖国神社国家護持運動を振り返る必要がある。当時の日本遺族会会長は、国家護持のために靖国神社の非宗教化を容認する考えだった。また1969年から70年代にかけて自民党が国会に提出し衆議院を通過した靖国神社法案においても非宗教法人化・宗教色の希薄化が打ち出されていたが、日本遺族会はこれも支持している。しかし靖国神社は、宗教色の希薄化を問題として反対したのである。

 靖国神社の、例え国家護持のためであっても宗教色の希薄化や排除は受け入れられないという立場は70年代当時から明確にされており、現在でもそれは変わっていない。「ひとたび国家護持を目指した以上〜」との主張は、靖国神社の主張や立場のごく一部分を捉えてあげつらっているだけの難癖でしかない。


 二つ目の論点は、「神道(神社)は宗教ではない」という例の主張である。実はこの主張は現在でも根強く存在し、曰く、神道(神社の存在や、神社への参拝)は単なる習慣、習俗、信仰であり、「宗教」ではないというのである。政治家の神社参拝などを政教分離違反とする神社絡みの政治問題に対する反論としてこの主張を持ち出す人は、保守派の中にも少なからず存在する。

 この論拠としてよく挙げられるのが、神社神道には教祖がおらず、経典が無く、戒律がないから宗教とは言えない、というものである。しかしながらこれらの要素は創唱宗教の条件であって、自然宗教には当てはまらない。神を信仰し、神話を語り、惟神(かんながら)の道を理想とし、死者を神と祀る神道が宗教ではないなどとは到底言えない。


 この、政教分離違反云々への反論としての神社非宗教論にしても、天皇陛下参拝のためだとする靖国非宗教化論にしても、どうにも神道の扱いがぞんざいであり、これは神道を国家に従属する一種のツールとした国家神道時代の数十年の断絶が一因だと思われるが、神道の意義がうまく継承されていない事は非常に憂慮される問題である。
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2008年03月29日

チベット問題:長期的な中国包囲網を

 現在、中国共産党政府のチベット人弾圧に対して国際社会が非難を繰り広げ、北京オリンピックボイコットや開会式欠席などの是非でニュースメディアが盛り上がっている。

 しかしながら今、国際社会が第一に取るべき行動はオリンピックのボイコットではない。勿論、ボイコットや開会式欠席という方法で意思表示を行うことにも大きな意義はある。特に個人が自分の意志でボイコットする事は、その人の勇気と高徳を示す素晴らしい行為である。だが一部の国や個人がオリンピックをボイコットしても、それ自体は中国にとって大した損害ではない。中国をいくら「批判」しても暖簾に腕押しなのである。

 中国にとって北京オリンピックボイコットこそ「最も恐れている事」であり「国威の危機」であるから、ボイコットをちらつかせることで弾圧を阻止出来るのではないか、という考え方は根強い。しかし中国にとってそんな事は大した問題ではないのだ。極端な話、例え参加国が半減したとしても、中国政府はただ単に残った国でオリンピックを行うだけの話である。確かに国威に傷が付くから避けたい事態ではあるにせよ、それすら中国は逆に被害者意識を前面に出す事で交渉と自己主張のカードに変えるだろう。

 丁度オリンピックを前にしたこの時期に起きた弾圧であるから、国際社会の中国への批判は殆どが「ボイコットの示唆」という形で表現されている。しかし今はそんなことをしている場合ではない。こう言っては何だが、ボイコットの是非で揉めている時点で、中国共産党政府の思い通りである。そうやって揉めている間は他の対応が出てこないからだ。

 一番ありそうな流れとしては、中国共産党政府はボイコットの機運が最高潮に達した時点で僅かに態度を軟化させ、その「譲歩」によってボイコットを頓挫させようとするのではないか。そしてオリンピックが終わればまた、中国式の「最終的解決」に向けた工程(計画)が前進するわけである。

 この件において国際社会が取るべき行動とは、換言すると中国にとって真に由々しき事態とは、北京オリンピックのボイコット云々ではなく、経済・金融制裁あるいは渡航制限や留学生受け入れ拒否、そして武器禁輸である。だがこれらは中国を批判する国々にとっても損失を伴う諸刃の剣であり、可能な限り避けたい所である。そこでボイコットや開会式欠席という、シンボリックだがそれだけでは実質を伴わない対応ばかりが現れてくる。しかもこれらを実際に行うかどうかさえも定かではない。現時点ではただ議論しているだけである。

 天安門事件の時、国際社会は激しく反発し、経済・金融制裁を行った。残念なことに日本政府及び外務省はこれに大反対し、極めつけとして天皇陛下訪中によって中国包囲網を御破算させたが……。一方1949年から今に至るまで続くチベット侵略と迫害・弾圧は、天安門事件を遙かに超える大問題である。中国のチベット政策は一貫しており、ただただ説得のみによってこれを変更させるのは不可能である。

 現在の中国経済の影響力や中国の軍事力を考えると、天安門事件のように制裁を行うことは難しい。それは確かである。しかし経済的あるいは軍事的事情によって現時点では制裁が困難だというなら、少なくともその事情を変化させるように長期的な行動を取るべきだろう。

 ボイコットも良い。しかしチベット問題においての意義という事を考えると、オリンピック後の国際社会の行動こそが鍵である。
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2007年12月15日

米軍の超巨大な研究開発体制

 アメリカのレイセオン社は世界有数の軍需企業であり、世界最大のミサイルメーカーである。社名のRaytheonとは古代フランス語とギリシャ語を合成した造語で「神々からの光線」という意味である。
 自衛隊もこの企業からはパトリオット、スタンダード、スパロー、アムラーム、サイドワインダー、ファランクスといった様々な兵器を導入してきた。

 そのレイセオンは今や、軍事用パワードスーツの事業化に向かうつもりらしい。

WIRED VISION 「装着する外骨格」パワードスーツの実演
http://wiredvision.jp/news/200711/2007112722.html

 このパワードスーツはSarcos社が開発した物で、レイセオンは同社のロボット事業を買収したとの事である。

 見ての通り、このパワードスーツは小型であり、軽快に動く事が出来、重量物を容易に持ち上げることが出来る。この技術が発展すれば、いずれ防弾レベルIVの(15mの距離でライフル徹甲弾に耐える)ボディアーマーとヘルメットを装備したまま100kgの荷物を背負い、軽機関銃と擲弾発射筒を装備して起伏の激しい地帯を楽々50km行軍というような事が出来るようになるかも知れない。
 このようにパワードスーツといえばついつい歩兵に装備させる事ばかり思い浮かべてしまうが、実際にはそんなSF的な使い道の他に、例えば砲迫を運用する際や物資を積み下ろしする際に素早く軽々と重量物を運搬する、あるいはトラックが入れない山中や建物内に重機材を搬入する、などといった用途にも大きな軍事的価値がある。

 DARPA(米国国防高等研究計画局)が出資して研究中の「ロボットろば」も、そのような補助的な用途を想定している。これは兵士に随伴して荷物を運ぶロボットである。

WIRED VISION 戦場で活躍するか?「ロボットろば」
http://wiredvision.jp/blog/dangerroom/200707/20070720134328.html


 アメリカは先端軍事技術において世界最高のものを持っている。それは何故かというと、米軍の戦争経験云々などよりもまず第一に、膨大な研究開発予算によるものである。

 アメリカが軍事技術の研究開発に投入する年間予算は何と約700億ドル(2005年度)、日本円にして約8兆円である。つまり研究開発費だけで、日本の防衛予算(約5兆円。なお研究開発費は約1500億円)を遙かに超えているわけである。研究開発予算を直接比較すると、驚くべき事に日本はアメリカの約2%に過ぎない。日本のGDPは、アメリカの半分近くであるにも関わらずである。
 この、他国が全く比肩し得ない潤沢な予算を使ってアメリカは世界最高の先端技術を開発し、他国の軍隊に対する圧倒的なアドバンテージ、「対抗不能性」を備えようとしている。


 パワードスーツやロボットろばのような補助的な新技術の積み重ねも対抗不能性を生み出すひとつの手段だが、対抗不能性の例として非常に判りやすいのはこの研究だろう。

米軍、極超音速爆撃機開発に1億ドル投入=WP紙
http://www.chosunonline.com/article/20071113000034

 この計画「ファルコン」では、高度3万〜4万mをマッハ5以上で飛行する爆撃機を開発する。
 これはつまり、現在の防空技術ではどこの国も全く対抗出来ないという事だ。また航続距離は2万kmにも達し、全地球を爆撃圏内に納める事が出来る。
 上の記事によればこの極超音速爆撃機は小型ロケットで打ち上げられるが、その為の小型ロケットも平行して開発されるという。そしてそのロケットは衛星打ち上げ用としても利用される。今までもこうした軍事技術からのスピンアウトによってアメリカの宇宙開発は発展してきた。

 先端科学技術を制する国は世界を制する。中国も宇宙開発や先端軍事技術開発に膨大な予算とリソースを投入している。日本も今後技術的後進国に成り下がらないよう、予算や開発体制を余程強化する必要があるだろう。
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正露丸が自衛隊の装備品として復活、しかし……

 ネパールに派遣された自衛隊の装備品として正露丸が採用され、今年3月に実際に配給されていた。正式な装備品としての採用は戦後初である。
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200711140038a.nwc

 正露丸は日露戦争以来の伝統ある薬であり、「征露」から来た名前に愛着を持つ人も少なくない。
 しかし調べてみると、正露丸というのは大いに注意を要する薬である。
 正露丸の主成分は「木クレオソート」で、これはクレゾール、フェノール、グアイアコールなどで構成されるが、これらは人体に極めて有害な物質なのである。しかも日本薬局方による木クレオソートの説明には、下痢に対する効能は全く記載されていない。

Wikipedia:正露丸
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A3%E9%9C%B2%E4%B8%B8
研究報告:正露丸(セイロガン)の有効性と安全性
http://www.geocities.jp/m_kato_clinic/seirogan-ombs-houkoku-01.html
概説:正露丸(セイロガン)とはどんな薬なのか?
http://www.geocities.jp/m_kato_clinic/seirogan-01.html
概説:正露丸の問題について
http://www.mi-net.org/yakugai/daboard/dascramble/seirogan.html

 最近の正露丸には木クレオソート以外に様々な漢方薬が配合されており、これらには下痢に対する何らかの効能があると考えられる。ただ、それなら木クレオソート抜きで漢方薬だけを飲めば良いのではないか。

 自衛官は支給された正露丸を使うよりも、代わりに自分で成分を調べて効果を吟味した適切な止瀉薬(下痢止め)を用意して携行した方が良いと思われる。国家の大事に備える将兵は、自分が口に入れる物質には常に気を遣って然るべきである。
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2007年09月25日

「古賀選対委員長」の衝撃

 自民党総裁選の結果、福田新総裁が誕生した。早速党役員人事が行われ、「党四役」に伊吹派の領袖・伊吹文明、谷垣派の領袖・谷垣禎一、二階派の領袖・二階俊博、古賀派の領袖・古賀誠が任命された。

 幹事長:伊吹文明
 政調会長:谷垣禎一
 総務会長:二階俊博
 選対委員長:古賀誠

 これは全く大した顔ぶれである。その中でも、選対委員長の古賀誠が特に凄い。福田総裁は古賀氏を総務会長に任命するつもりであったが、古賀氏本人の希望によって、本来幹事長直属のポストである選対総局長を選対委員長に格上げして党四役体制としたとの事である。

 選挙は国会議員にとって死活問題であり、公認やカネの配分を決める選挙対策のトップは絶大な権力を行使出来る。今までは選対総局長を部下とする幹事長にその権力があったのだが、今回の党役員編成によってそれが選対委員長に移行した。
 これは事実上、古賀氏が自民党の頂点に立ったようなものである。

 その古賀氏は、もし成立すれば稀代の悪法となる人権擁護法案の強力な推進者である。2005年には法務部会で強行突破を計った(もしここで通っていればそのまま国会で成立していたと言われる)が、平沼赳夫や亀井郁夫といった議員達の断固とした反対によってその企ては頓挫した。

 今や選対委員長として絶大な権力を振るう立場となった古賀氏が再度人権擁護法案をごり押しした場合、議員達はこれを防ぐ事が出来るのであろうか? その時こそ自民党の真価が問われる瞬間である。
posted by amano at 00:52 | TrackBack(0) | 東アジア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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